AI検索はプロンプト単位で動く — クエリファンアウトの有無でLLMOの打ち手が分かれる

LLMO(AI検索最適化)の相談では、最初に「引用率を上げたい」「サイト全体をAIに最適化したい」という言葉がよく出ます。ただ、AI検索は「サイト単位」ではなく「プロンプト単位」で動いているため、この入り口のままでは打ち手も評価もぼやけてしまいます。
本記事では、AI検索がプロンプト単位で動く理由から、クエリファンアウトの有無でLLMOの打ち手がどう分かれるか、そして診断データが示す「引用される土台」の実態までを解説します。
10年以上のSEOコンサルティング経験と、SEGO診断ツールで蓄積した1,763サイト・2,912件の実データをもとに、中小企業のサイト運営者が今日から判断に使える内容にまとめました。
クエリファンアウトの仕組みそのものを先に押さえたい方は、クエリファンアウトとは?中小企業が知るべきAI検索の新常識もあわせてご覧ください。
Contents
AI検索はサイト単位ではなく「プロンプト単位」で動く
LLMOで最初に押さえるべき前提は、AI検索が「サイト単位」ではなく「プロンプト単位」で動いているという点です。
ホテルのコンシェルジュを思い浮かべてください。宿泊客の質問に対して、コンシェルジュは自分が前から知っていることをその場で答えることもあれば、「少々お待ちください」と受話器を取り、最新の状況を確認してから答えることもあります。AI検索もこれに近く、質問によって自分の知識だけで答えるか、外へ問い合わせにいくかが変わります。
そのため、同じカテゴリでもユーザーの質問(プロンプト)が変われば、AIが必要とする情報はまったく別物になります。たとえばクラウド会計ソフトでも、プロンプトごとに求められる情報は次のように分かれます。
- 「個人事業主におすすめのクラウド会計ソフトは?」→ 選び方・対象規模・価格帯・サポート
- 「インボイス対応の会計ソフトを比較して」→ 対応可否・機能比較・更新情報
- 「freeeとマネーフォワードはどちらがいい?」→ 固有名詞の比較・評判・乗り換え情報
同じ「会計ソフト」でも、AIが探しにいく情報はこれだけ変わります。つまりLLMOの対策対象は「サイト全体」ではなく、具体的なプロンプト単位で考える必要があるということです。この感覚は、SEOのキーワード選定に近いものがあります。
そして見落とされがちなのが、土台側の問題です。SEGO診断では、技術面(technical)の平均は92.2点と高い一方、引用される情報構造(citation)の平均はわずか7.2点でした。技術的には整っているのに、AIに引用される形になっていないサイトが多いのが実態です。この点は後半のデータで詳しく扱います。
LLMOのプロンプトは「どれを取りにいくか」を先に決める
LLMOで最初に決めるべきなのは、「どのプロンプトで引用・推薦されたいのか」というプロンプト選定です。
ここが曖昧なまま施策に入ると、何を直せばよいのかも、うまくいったかどうかの判断も、すべてがぼやけてしまいます。AI検索には検索ボリュームや順位のような単一指標が存在しないため、追跡対象のプロンプトを選ぶ行為そのものが戦略になります。
進め方は、まず狙うプロンプトを決め、そのプロンプトに対してAIが必要とする情報を整理し、最後にページ内情報・外部情報・構造化データ・評判情報を整えていく、という順番です。LLMOのプロンプトを「広く全体」で捉えず、SEOのキーワード選定と同じ粒度で具体的に絞り込むことが出発点になります。
狙うプロンプトで「クエリファンアウト」が起きるか見極める
もうひとつの前提として、AI検索はすべての質問で外部検索を走らせているわけではありません。
AI検索では、ユーザーが入力した1つのプロンプトを、AIが内部で複数の検索クエリに分解して検索をかけることがあります。これを「クエリファンアウト」と呼びます。仕組みの詳細はクエリファンアウトの解説記事に譲りますが、ここで重要なのは、プロンプトによってはこのクエリファンアウトが起きないということです。
AIが外へ問い合わせず、内部の学習済み知識だけで答えてしまうケースでは、回答に引用リンクが出なかったり、出典がごく限定的になったりします。ここで注意したいのが、「AI回答に引用リンクがない=自社サイトが評価されていない」とは限らない、という点です。そもそも外部検索が走っていない質問であれば、誰のサイトも引用されません。引用の有無だけを見て良し悪しを判断すると、結論を読み違えます。
狙ったプロンプトについて、施策の前に次の3点を観察しておくと、判断がぶれにくくなります。
- 外部検索が走るプロンプトか:最新性・比較・推薦・店舗やサービスの選定・事例・根拠が求められる質問は、外部検索が走りやすい傾向があります。
- データベース回答になりやすいプロンプトか:定義や一般知識のように、AIが内部知識だけで答えやすい質問では、引用リンクが出ないこと自体を問題視しすぎないようにします。
- 引用リンクが出やすい「聞き方」か:「〇〇とは?」より、「〇〇を比較して」「〇〇に対応している企業は?」「〇〇の事例を教えて」のような聞き方のほうが、外部の情報や根拠が必要になりやすいと考えられます。
クエリファンアウトの有無でLLMOの打ち手が分かれる
狙うプロンプトでクエリファンアウトが起きるか起きないか。この見極めによって、LLMOの打ち手ははっきり2方向に分かれます。
クエリファンアウトが起きるプロンプトの場合、AIは外へ検索をかけにいきます。であれば、分解されたサブクエリで拾われる・引用される情報構造を作ることが、そのまま施策になります。狙うサブクエリのキーワードを洗い出し、ページの情報・一次情報・根拠・最新性・構造化データを整える。従来のSEOに近い動き方ができ、短期でも成果につながりやすい領域です。
ただし、この「拾われる情報構造」が整っていないサイトは少なくありません。SEGO診断では、回答を結論から先に書く構成(answer_first)の合格率は5.4%、FAQの構造化(faq_markup)は13.3%にとどまりました。ファンアウトで分解されたサブクエリに拾われるための「形」が、そもそも用意できていないサイトが多いということです。
クエリファンアウトが起きにくいプロンプトの場合、話が変わります。外部検索が走らないということは、特定のページを一生懸命SEOしても短期的には拾われにくいということです。打ち手は、ページ単位の最適化から、AIの知識そのものに認識される土台づくりへとシフトします。ブランドやサービスがエンティティ(AIが認識する固有の対象)として一貫して言及されている状態をつくる、第三者からの言及を増やす、情報の整合性を保つ、といった中長期の積み上げです。
だからこそ、「キーワードを調べてSEOする」が効きやすいプロンプトなのか、土台づくりに比重を置くべきプロンプトなのか。この見極めを先にやっておくと、限られたリソースの配分を間違えずに済みます。
データで見る「引用される土台」が無いという実態
「引用率を上げたい」と多くの人が言います。しかし診断データを見ると、そもそも引用される土台が用意できていないサイトが大半です。
SEGO診断1,763サイトのカテゴリ別平均スコアを見ると、技術面(technical 92.2)と権威性(authority 88.7)は高い一方、引用される情報構造(citation 7.2)とGEO(13.2)が極端に低い、という偏った形が浮かび上がります。
引用される土台(citation)の中身を項目別に分解すると、低さの理由がはっきりします。Wikipediaでの言及や引用元の権威性、著者情報の明示といった、AIが「引用してよい情報源」と判断するための要素が、軒並み合格していません。citation(引用準備)スコアのより詳しい集計は診断1,287サイトのcitationスコア集計でも公開しています。
「技術的には正しいのに、AIに引用されない」——これは多くのサイトに共通する実態です。技術SEO(semantic_html 89.2%、schema_org 74.2%)はできているのに、引用される情報構造が床のまま放置されている。だからこそ、サイト全体を漠然と最適化するのではなく、プロンプト単位で「どの土台を整えるべきか」を決める意味があります。構造化データの整備については構造化データとは?【JSON-LD】SEOとAI検索に効く5つのスキーマもあわせて参照してください。
プロンプト選定から情報整備までの実務手順
ここまでの内容を、実際の手順に落とすと次の順番になります。いきなり施策に飛び込まず、プロンプトの性質を見極めてから動くことで、リソースの配分を誤りにくくなります。
- どのプロンプトで引用・推薦されたいのかを決める(サイト全体ではなく具体的なプロンプト単位で)
- そのプロンプトでAIが必要とする情報を整理する
- クエリファンアウトが走るプロンプトかを観察する(AI検索で自社が表示されているかの確認方法も活用)
- 引用リンクが出るタイプの回答かを確認する(出ない場合に「評価が低い」と短絡しない)
- 自社が引用対象になり得る情報構造を持っているか確認する(citation 7.2/著者情報 3.5%/answer_first 5.4% のように、土台が無いケースが多い)
- ページ内情報・外部情報・構造化データ・評判情報を整える(ファンアウトの有無で重心を変える)
LLMOは、「何を改善するか」の前に「どのプロンプトを取りにいくか」を決めることが先決です。そして「引用率」という数字だけを追うのではなく、そのプロンプトでクエリファンアウトが起きるのか、引用リンクが出るタイプなのか——プロンプトの性質そのものを見極めることが、限られたリソースを正しく配分する第一歩になります。
SEGOでは、URLを入力するだけで、引用される情報構造(citation)やAI検索対応を含む項目を無料で診断できます。自社サイトに「引用される土台」があるかを確認したい方は、ぜひご活用ください。
この記事を書いた人

岡 拓馬(おか たくま)
外資系SEOスペシャリスト / SEGO開発者
約10年の国際SEOコンサルティング経験
航空自衛隊で航空機整備員として勤務した後、2015年にフリーランスのWebライター・SEOコンサルタントとして独立。以来、アジア各国を拠点に海外ノマドワーカーとして活動。フィリピンの外資系企業でSEOスペシャリストとして従事した後、約10年の国際SEOコンサルティング経験をもとにSEO×AI検索の診断ツール「SEGO」を開発。著書に『AI時代のテクニカルSEOの教科書』(Kindle)、Udemy講座『AI時代のコンテンツSEOの教科書』がある。
執筆プロセス:本記事はAI(Claude Sonnet)による下書きを、岡拓馬が一次データ追加・実例追記・文意確認を行ったうえで公開しています。内容の最終責任は筆者(岡拓馬)が負います。