フィリピンSEOイベント参加レポート|AI検索・LLMO・SEO業務自動化の実践知

フィリピンSEOイベント参加レポート|AI検索・LLMO・SEO業務自動化の実践知

2026年10月10日、フィリピン・マニラ首都圏のパシッグで開催されたSEO・デジタルマーケティングの交流イベント「Kita Tayo」に参加しました。会場では、AI検索を踏まえたランディングページ最適化から、エンタープライズSEO、Claude Codeによる業務自動化、AI検索上のブランド可視性の計測まで、幅広い実務の話が共有されました。

本記事では、当日参加して撮影した写真とメモをもとに、6つの講演・紹介の要点を整理します。単なる講演要約ではなく、日本でSEO・LLMOの支援に携わる立場から、実務に取り入れたい考え方と、導入前に確認すべき点を分けて紹介します。

イベント会場 The Hangout Coworking Space のサイン
Kita Tayoの会場となったThe Hangout Coworking Space

Kita Tayoとは?フィリピンのSEOコミュニティイベント

Kita Tayoの正式名称は「Kita Tayo: A Filipino SEO & Digital Marketing Community Meetup」。公式案内によると、Krisette Lim氏がホストを務め、SEOやコンテンツ制作、AI、デジタルマーケティングに関わる実務者が知見を持ち寄るイベントです。2026年10月10日の開催時間は9時〜13時、会場はオルティガス地区のThe Hangout Coworking Spaceでした。

公式イベントページ:https://luma.com/oousnglj

登壇内容は、SEOの特定領域だけに閉じていません。サイトを改善する技術、クライアントと成果を出す進行管理、そしてAIで業務プロセスをどう変えるかが一続きのテーマとして扱われていたことが印象的でした。

Kita Tayoに集まった参加者と登壇者の会場風景
フィリピンのSEO実務者が集まった会場内

AI検索時代のLPOとオフページSEO|Jason Acidre氏

Jason Acidre氏のセッションでは、AI検索の利用が広がるなかで、訪問者がWebサイトに到達した後の体験をどう最適化するかが取り上げられました。従来の検索結果でクリックを得ることに加え、比較検討や意思決定に役立つランディングページを設計する重要性が示されました。

具体的には、サービスの対象者、料金、他社との違い、実績、選択の根拠をページ内で見つけやすくすること。見出し・FAQ・内部リンクなどの情報設計も、検索エンジンだけでなく利用者が理解するための基本です。構造化データはページ上の内容を機械可読に伝える補助になりますが、実装だけでAI回答への採用が保証されるわけではありません。

ランディングページ最適化の取り組みを示す講演スライド
Jason Acidre氏のAI検索時代のLPOに関する講演

また、ブランドの情報が自社サイト以外の媒体でどのように語られるかも重要です。第三者メディアの掲載、デジタルPR、業界内での言及といったオフページ施策を、ページ内のコンバージョン改善と切り離さずに考える必要があります。ただし、外部で言及が増えることとAI検索で引用されることは、常に一対一で対応するわけではありません。

💡 実務への示唆

自然検索経由のセッションだけで判断せず、重要な商談・問い合わせにつながるLPについて、必要な情報が揃っているか、指名検索や第三者評価との接点があるかを併せて確認したいと感じました。

第三者からの言及の考え方は「サイテーションとは?AI検索時代に重要性が増す理由と中小企業でもできる獲得方法」、構造化データの役割は「構造化データとは?【JSON-LD】SEOとAI検索に効く5つのスキーマ」で解説しています。

AIで作れることと、運用できることは違う|Andrea Toribio氏

Andrea Toribio氏の「You Can Vibe Code It. But Should You?」は、AIを使った開発や業務自動化の便利さだけでなく、その後の責任を問い直す内容でした。AIの支援によりプロトタイプを短時間で作れても、運用環境に組み込む際のセキュリティ、保守、障害対応まで自動的に解決するわけではありません。

You Can Vibe Code It But Should Youと題したスライド
AI開発の技術的負債と運用責任を考える講演

たとえばAIが「このページを修正すればSEO流入が改善する」と提案したとしても、流入低下の原因が計測変更、インデックス制御、競合変化、季節要因にある可能性は残ります。原因分析を省いてCMSの本番記事を大量更新することは、影響範囲を広げるリスクがあります。

レビューと証拠と承認の重要性を示す講演スライド
AIで構築した仕組みのレビューと責任分担

💡 実務への示唆

SEO自動化では「実行できるか」より先に「どこまで実行させるか」を決めるべきだと思います。読み取り専用の分析、提案書作成、テスト環境での修正、本番公開では、求められる承認レベルが異なります。変更履歴、差し戻し手順、最終承認者まで設計して初めて運用可能な仕組みになります。

自社ツールの実装を公開後に検証し、修正した記録として「自社AI診断ツールを実装監査して見つけた13箇所の数値不一致と修正記録」も公開しています。

大規模サイトのテクニカルSEOとサイト移行|Jerome Esperanza氏

Jerome Esperanza氏のセッションは、エンタープライズ環境でのサイト移行やテクニカルSEOを扱うものでした。AI検索が注目されても、URLの移行やクロールの制御、内部リンクなどの基礎的な技術要件が不要になるわけではありません。

サイト移行では、旧URLと新URLの対応表を先に作り、原則として適切な転送先へ301リダイレクトを設定します。canonicalや内部リンク、XMLサイトマップ、主要ページのステータスコードなども検証対象です。膨大なURLを個別に管理するのが難しい場合は、パターン化したリダイレクトルールと例外処理を組み合わせる考え方が役立ちます。

Preserve validate then optimizeと書かれた講演スライド
サイト移行では維持・検証の後に最適化する

注目したいのは、移行と同時に大規模な最適化を重ねないという姿勢です。URL構造・テンプレート・内部リンク・コンテンツを一度に変えると、移行後に検索流入が変動した際、原因の切り分けが難しくなります。Google Search Consoleに404が表示された場合も、意図して削除したURLなのか、本来存在すべきURLなのかで対応は変わります。

また、CDNやセキュリティ設定によってGooglebotなどのクロールが阻害されるケース、GA4とGSCで計測対象・集計基準が異なるケースにも注意が必要です。

💡 実務への示唆

大規模サイトの移行では、公開日をゴールにせず、移行前の基準値、公開直後の検査、移行後の監視を一体の作業として計画すべきです。「移行を安定させてから改善する」という順序は、日本の企業サイトでも応用しやすいと感じます。

移行時の検証項目については、「canonicalタグとは?正規URLの設定方法と重複コンテンツ対策」「サイトマップの作り方とSEO効果」「クロールバジェットとは?気にすべきサイトの見分け方」もあわせてご覧ください。

SEOプロジェクトを成功に導くQuaRTS²|Jonah Chipeco氏

Jonah Chipeco氏のセッションでは、SEO施策を実行に移すためのプロジェクト管理が取り上げられました。紹介されたQuaRTS²は、品質(Quality)、リソース(Resources)、期間(Timeline)、作業範囲と工程(Scope & Steps)を整理するフレームワークです。

QuaRTSフレームワークの活用ステップのスライド
QuaRTSによるプロジェクト管理の考え方

特にSEOコンサルティングでは、成果(Outcome)と納品物(Output)を混同しないことが大切です。監査レポートを提出することは成果につながる工程ですが、それだけで事業目標の達成を意味しません。実際には、施策を実装する担当者、承認の期限、開発リソース、計測体制まで揃わなければ改善は進みません。

クライアントからの確認待ちもスケジュール上の依存関係として扱うべきです。追加依頼が生じた際は、無制限に引き受けるのではなく、費用・納期・作業範囲のいずれを調整するか明確にする必要があります。

💡 実務への示唆

複数のSEO案件に携わっていると、提案の質以上に、誰がいつ判断し実装するかが成果を左右する場面があります。施策管理表を作るなら、優先度だけでなく責任者、承認状況、期限、未解決の依存関係まで管理する設計が実践的です。

Claude Code・Skills・MCPで変わるSEO業務|Chris氏

Chris氏の「SEO at the Speed of AI」は、今回の中でも自分の業務に取り入れるイメージを持ちやすいセッションでした。Claude Code、Skills、MCP(Model Context Protocol)などを用い、SEO監査・分析・施策の優先順位付け・レポーティングをつなげる考え方が紹介されました。

補足すると、Skillsは、特定の作業でAIに守らせたい手順や出力形式をまとめる仕組みです。MCPは、対応する外部ツールやデータソースとAIを連携させるための仕組みです。たとえばGSCデータを読み、対象ページの状況を確認し、改善案を整理して、レビュー可能な納品物を作る、という一連の流れを組み立てられます。具体的な接続先や操作範囲は各サービスの実装・権限によって異なります。

SEO監査に適用するSkillsについての講演スライド
SkillsでSEO業務の実行手順を定義する
AUDIT・TASK PLAN・EXECUTION・REPORTの4工程を示す図
SEO監査から施策と報告をつなぐAIワークフロー

講演では、既存記事との重複やカニバリゼーションを検知し、新規作成ではなく既存ページの更新を検討する例や、CMS反映時にもレビューと承認を残す考え方が示されました。AIが出した変更案を自動公開することと、担当者が採否を判断できる形で出力することは別です。

The process is the assetと記されたスライド
AIに代替させるのではなくプロセスを資産化する

The process is the asset.
AI does not replace your process. It runs it.

— Chris氏の講演スライドより(プロセスこそが資産であり、AIはプロセスを置き換えるのではなく実行するもの)

💡 実務への示唆

最も参考になったのは、単発のプロンプトではなく、再現可能な判断手順を蓄積する発想です。SEGOでも、SEO監査、SERP分析、AI検索の可視性調査を個別の結果に終わらせず、「課題→根拠→具体施策→優先度」につなげる設計を重視しています。自動化するのは判断の全権ではなく、判断材料を集めて整理する工程から始めるのが現実的でしょう。

GSCデータをAIで分析する具体的な手順は「Search Console×BigQueryの使い方|SQLとAIでSEOデータを分析する方法」、既存記事を更新する考え方は「AI検索時代のSEOリライト|既存記事を「引用される形」に作り直す手順」で紹介しています。

Rankseerに見るAI検索のブランド可視性計測

最後のセッションでは、AI検索におけるブランドの見え方を分析するツール「Rankseer」のデモが紹介されました。公式サイトでもAI Share of Voiceの計測や、トレンド把握のための機能が案内されています。

公式サイト:https://rankseer.com/

Rankseerの時系列グラフを表示したデモ画面
Rankseerの時系列ダッシュボード
RankseerのShare of Voice分析のデモ画面
ブランドのAI検索上のShare of Voiceを確認する画面

AI検索では、通常の検索順位だけではブランドの露出を捉えきれません。対象の質問群に対する回答のうち、どの程度自社ブランドが言及されたか、競合と比べてどの程度の存在感があるか、といった観測が重要になります。

なお、筆者の補足として、「言及率」「Share of Voice」はツールや調査設計ごとに分母が異なりえます。質問数、対象サービス、モデル、実行日、地域・言語、回答の揺らぎを固定・記録しなければ、前月比の増減を素直に成果として評価できません。また、言及増加がそのままサイトへの流入やリード増加を意味するものでもありません。

💡 実務への示唆

AI検索の計測では、一度の回答スクリーンショットよりも、再現可能な観測条件と継続的な比較が重要です。SEOのGSC・GA4データとも並べて確認しながら、どの指標がブランド認知、訪問、問い合わせに対応するのかを分けて考えるべきだと思います。

同じ条件で継続的に観測する方法は「LLMOの効果測定のやり方|被引用・ブランド指名検索・AI流入の測り方」、観測対象とする質問(プロンプト)の考え方は「AI検索はプロンプト単位で動く — クエリファンアウトの有無でLLMOの打ち手が分かれる」、Search Consoleで確認できるAI検索の表示回数は「Search Consoleの生成AIレポートの見方」で解説しています。

6つの講演から見えたSEO実務の3つの変化

1. 検索順位の改善だけでは成果を説明しきれない

ランディングページの意思決定支援、第三者メディアでのブランド露出、AI回答中の言及まで、ユーザーの情報接点が広がっています。一方で、従来の自然検索流入とAI検索でのブランド露出は別指標です。指標を混同せず、事業上の成果までつながる経路を整理する必要があります。

2. AI活用の差は、ツールより運用プロセスに出る

AIで監査や文章生成を行うこと自体は珍しくなくなりました。実務上の違いは、何を根拠として判断するか、例外をどう扱うか、誰が承認するかを標準化できるかにあります。便利なデモを継続可能な業務へ変えるには、権限管理や検証工程が欠かせません。

3. テクニカルSEOとプロジェクト管理が土台になる

AI検索の話題が増えても、クロール可能性、URL設計、サイト移行、計測の整合性が重要なことは変わりません。さらに、技術的に正しい施策でも、承認や実装が進まなければ成果になりません。技術とプロジェクト運営を横断して考える必要があります。

まとめ|海外の知見を日本のSEO・LLMO実務へ

今回のKita Tayoでは、AI検索という新しいテーマを扱いながらも、結局は「利用者に必要な情報を届ける」「根拠を確かめて改善する」「再現可能な仕組みを作る」という実務の原則に立ち返る話が多かったと感じました。

自分自身も、今後のSEO・LLMO支援やSEGOのツール開発では、分析結果を羅列するだけでなく、改善すべき課題と実行手順まで明確にする方向で活用していきたいと考えています。

SEGOでは、SEOの現状分析から施策の優先順位付け、AI検索への対応までご相談いただけます。詳しくはSEOコンサルティングをご覧ください。

取材・執筆メモ:2026年10月10日、フィリピン・パシッグの現地会場で撮影・記録した情報をもとに作成。講演内容の要約と筆者の考察を区別して記述しています。

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この記事を書いた人

岡 拓馬

岡 拓馬(おか たくま)

外資系SEOスペシャリスト / SEGO開発者

約10年の国際SEOコンサルティング経験

航空自衛隊で航空機整備員として勤務した後、2015年にフリーランスのWebライター・SEOコンサルタントとして独立。以来、アジア各国を拠点に海外ノマドワーカーとして活動。フィリピンの外資系企業でSEOスペシャリストとして従事した後、約10年の国際SEOコンサルティング経験をもとにSEO×AI検索の診断ツール「SEGO」を開発。著書に『AI時代のテクニカルSEOの教科書』(Kindle)、Udemy講座『AI時代のコンテンツSEOの教科書』がある。

執筆プロセス:本記事はAI(Claude Sonnet)による下書きを、岡拓馬が一次データ追加・実例追記・文意確認を行ったうえで公開しています。内容の最終責任は筆者(岡拓馬)が負います。